脳神経外科

主な診療対象

  • 脳血管障害全般(脳内出血、脳動脈瘤、閉塞性脳血管障害など)
  • 脳腫瘍(悪性、良性)
  • 頭部外傷
  • 機能的脳神経外科手術 (顔面痙攣、三叉神経痛など)
  • その他脳・脊髄全般の疾患

診療内容・特徴

初めて常勤として脳神経外科医が着任した昭和62年1月に当院の脳神経外科が本格的にスタートしました。それまでは週3回、昼間だけの非常勤務であり脳神経外科手術が必要な患者様が当院に搬入されると全て長崎大学病院に転送していました。それから24年が経過し、紆余曲折を経て現在の当院脳神経外科の状況は、年間入院患者数が約650名、年間手術症例数は100〜120例程度です。救急病院、中規模の私立病院という性格上脳血管障害や外傷の患者様が主体であり、脳腫瘍や小児脳神経外科は今でも大学病院にお願いしています。脳卒中に関しては多職種によるチーム医療、急性期リハビリを早期から実践し、全国に先駆けて脳卒中患者様の嚥下訓練に力を入れてきました。現在脳神経外科専門医2名、看護師、理学・作業・言語療法士、薬剤師、検査技師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーらと共に長崎地域における脳神経外科救急医療に貢献すべく日夜頑張っております。

医師・スタッフ紹介

りゅう のぶとし

伸年

役 職 十善会理事長
専 門 脳血管障害、脳腫瘍、機能的脳神経外科 など
コメント 長崎地区の皆様にとって必要不可欠な病院であり続けるために、精一杯頑張ります。
しみず ただし

清水

役 職脳神経外科部長 救急部長
出 身長崎大学医学部
専 門脳血管障害を中心に脳外科全般
資格・認定脳神経外科学会専門医、脳卒中学会認定医
コメント後ろに誰も乗せてないけれど、 ブレーキをいっぱい握りしめて、ゆっくりと下っていきたいと思っています。

一次脳卒中センター(Primary Stroke Center:PSC)

ご挨拶

当院は以前から脳神経外科を中心に多くの脳卒中患者様の治療を行ってまいりました。平成21年3月31日に長崎県から地域脳卒中センターに認定され、平成30年3月23日からは脳卒中支援病院へと変更されました。また日本脳卒中学会から令和元年9月1日に一次脳卒中センターとして認定されました。

脳卒中は発症から治療開始までの時間との戦いであり、また専門医による治療が必要です。当院は2名の脳神経外科専門医(脳卒中専門医1名)を中心に多職種からなるチーム医療で迅速かつ適切な脳卒中治療を行っております。また他の回復期リハビリ病院との緊密な連携にて回復期リハビリへのスムーズな移行を図っています。

脳卒中とは?

脳卒中とは簡単に言えば”突然に起こる脳の血管の病気”です。脳のある部分に血液が行かなくなり発症する脳梗塞、脳の血管が破れて起こる脳内出血、脳の表面に出血するクモ膜下出血の3つが主な疾患です。以前は日本人の死亡原因の第1位でしたが、現在は、がん、心臓疾患、肺炎に次いで第4位となっています。しかしこれは脳卒中の患者様が減ったというわけではありません。食生活の変化と急速に進む高齢化によって脳卒中の中でも脳梗塞は著明に増加しております。死亡に至らなくても言葉がでない、手足が動かない等の後遺症を抱えた患者様の介護は大きな問題です。

3つの主な脳卒中疾患について簡単に説明します。

1.脳梗塞

脳の血管がつまって発症する脳梗塞はその原因によって大まかに3つのタイプに分けられます。高血圧などの原因で脳内の細い血管に動脈硬化が起こりつまってしまうラクナ梗塞、高脂血症や糖尿病が主な原因で脳の大きな血管や頚動脈が狭くなって発症するアテローム血栓性脳梗塞、心臓の不整脈(心房細動)によっておこる心原性脳塞栓の3つです。脳梗塞が起こると言葉が出ない、手足が動かないといった症状が突然に出現します。発症時に頭痛を伴うことは稀です。

2005年10月に脳梗塞治療に対して新しい薬(rt-PA)が認可されました。超急性期血栓溶解療法といいますが、このrt-PA 発症から4.5時間以内に投与を開始することが必要です。しかし発症から投与開始までは早ければ早いほど良いとされており、如何に時間短縮を図るかがとても重要です。
突然しゃべれなくなったり手足が動かなくなったりしたけれど5分か10分で治った、とういうことがあるかもしれません。これは一過性脳虚血発作(24時間以内に症状が完全に消失するもの)の可能性があり、そうであれば脳梗塞の前触れです。症状がとれて良かったと安心、放置せずに病院を受診してください。

2.脳内出血

主に高血圧が原因ですが、脳内の細い血管が破れて出血し突然に手足が動かなくなったり言葉が出なくなったりします。出血の部位や大きさによっては意識障害を来たし致命的になることもあります。脳内出血が起こったら全例手術を行い血腫(=血の塊)を取るということはありません。小さい出血は血圧をコントロールして再出血を防ぎ血腫が吸収されるのを待ちます。意識障害を伴う大きな出血は緊急に頭を開いて血腫を除去することが必要です。中くらいの大きさの血腫は1週間くらい待って血の塊が溶けてきたら吸引除去することもあります。血腫が吸収されたり手術で除去されても麻痺などの症状は残ることが普通です。後遺症に対しては早期から積極的にリハビリを行い、できるだけの改善を目指します。

3.クモ膜下出血

突然の激しい頭痛、嘔吐、意識障害で発症するクモ膜下出血は、その原因のほとんどが脳動脈瘤破裂です。クモ膜下出血の患者様が脳神経外科病院に搬入されたら直ちに出血原因、すなわち脳動脈瘤の有無、部位、形状を精査して再破裂予防の治療を行います。これには開頭して行う脳動脈瘤頚部クリッピング術と血管内治療で行うコイル塞栓術があります。動脈瘤の部位、形状によって若干の向き不向きはありますがどちらも良い方法です。手術が無事に終わって再破裂の危険性が去ってもその次には乗り越えなくてはならない脳血管攣縮という大きな問題があります。また軽いクモ膜下出血、つまり出血量が少ない時には見逃されるケースも散見されます。軽症クモ膜下出血であっても放置すれば高率に脳動脈瘤再破裂を来たし致命的になります。クモ膜下出血こそ可及的速やかに脳神経外科病院受診(救急搬入)が必要な病気の最たるものです。

十善会病院の脳卒中診療体制について

当院の脳卒中診療体制、その特徴を以下に列挙します。

  1. 脳神経外科専門医による365日24時間オンコール体制
  2. 看護師、理学・作業・言語療法士、薬剤師、放射線技師、検査技師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなどによるチーム医療の実践。
  3. 徹底した急性期リハビリと早期からの摂食嚥下チームによる嚥下機能評価、嚥下訓練。
  4. 近隣病院との連携によるスムーズな回復期リハビリへの移行。診断機器としてはMRI,  multi-slice CTを保有しています。平成29年1年間の脳卒中入院患者様は255名で内7割以上が脳梗塞でした。超急性期血栓溶解療法をはじめとする急性期治療、急性期リハビリテーション、血行再建術など積極的に行っています。リハビリテーション体制は年々充実してきており、地域包括ケア病棟でも積極的にリハビリを行っております。

最後に

脳卒中に関してはその予防がとても重要です。

高血圧症や糖尿病、高脂血症などは脳卒中の主な原因ですので、それらの予防治療に努めましょう。また過量の飲酒や喫煙も脳卒中の誘因となりますので酒量を控えること、禁煙が必要です。また、言葉が出ないとか手足が動かない、これまで経験したことがない強い頭痛などを感じたら、たとえすぐに症状が改善しても安心せずに、直ぐに当院を受診してください。

診療科別主要手術別患者数等

令和4年度

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K164-2 慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術 57 0.75 16.32 10.53% 80.32  
K6101 動脈形成術、吻合術(頭蓋内動脈) 14 21.50 28.50 35.71% 68.71  
K6092 動脈血栓内膜摘出術(内頸動脈) 11 9.91 14.46 9.09% 71.00  
K1771 脳動脈瘤頸部クリッピング(1箇所)  
K1692 頭蓋内腫瘍摘出術(その他)  

前年に続き、慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術が一位ですが件数が45件から57件に増加しました。局所麻酔で手術を行い、通常1週間程度で退院が可能ですが平均年齢も高くなっておりそれに伴い在院日数も長くなっています。